社会・経済システム学会 第29回大会


グローバリゼーションにおける社会・経済システムの構想

社会・経済システム学会 第29回大会・大会テーマ

「グローバリゼーションにおける社会・経済システムの構想」

大会テーマ趣旨説明文

 アメリカでも日本でも2009年に政権交代があり、ようやく市場主義は逆転しはじめた。1989年の冷戦終結以来、20年続いたグローバリゼーションは、アメリカニゼーションへの追従と反発を脱して第2段階に入りつつある。2008年の金融危機を受けて、G8のヘゲモニーはG20に拡散した。政治面でも経済面でも、世界は先進国中心主義から、BRICsをはじめ新興国を取り込んだ多極主義へと軸を移している。どの政府が中心というわけでもなく、どの体制が正統性をもつのでもない、半面、どの地域も自分と無関係ではありえない状況の中で、各々の社会が増大するリスクを考えて、自らにとって最適なシステムを模索する時代になった。いよいよ本格的なグローバリゼーションが始まったともいえるだろう。

 では今、本学会の果たすべき役割とは何だろうか。まず考えうることは、グローバリゼーションの深化の中で、ある社会がそのシステムについて構想するための多次元的な相関図を提示することだろう。たとえば、地球環境問題と人口問題の相関関係、プレカリアートと官僚主義との因果関係など、グローバルとローカル、マクロとミクロを架橋するために、新しい視点から問題に取り組み、システム論的な考察をおこなっていくことが求められる。個別問題に対する個別の対策にとどまるのではなく、あるいは総論や抽象的議論で終わるのでもなく、広く専門家の議論を多次元でつなぎながら、システム論的な視点からのアプローチを提起することは、本学会こそが果たせる役割ではないだろうか。

 またグローバリゼーションは、日本の社会・企業および自治体などローカルな単位に、より現実的な対応を迫っている。たとえば日本の大学で学ぶ留学生が、卒業後も日本社会に定着して仕事と生活をしていくためには、どのような法的整備が必要だろうか。企業は新しい人材をどう活かしていけるだろうか。技術の移転や導入はどうあるべきか。あるいは自治体にとってどのような政策が可能だろうか。反対に日本では海外の人材を受け容れることに消極的であり続ける可能性も大きいだろう。その場合、グローバル化の中で、日本社会はいかに持続可能な社会・経済システムを見出していけるだろうか。独自のシステムを逆に世界に提案することは可能だろうか。

 さらに、グローバリゼーションは情報とメディアの世界で進行している。それは文化や価値観やライフスタイルの変容をもたらすだけに、人やモノの移動・流通以上に大きな影響をもたらしつつある。それらを新しい社会・経済システムのコンテクストにおいて理論化を試みる作業は、本学会にとってのもう一つの課題ではないだろうか。

 本大会では、海外から、若い研究者からも含め、全会員の活発な発表と議論を歓迎する。