社会・経済システム学会 2005.11.21
謹啓 会員諸氏におかれましては、ますますご清栄のことと存じ上げます。
さて、本学会の第24回大会が、11月12日(土)、13日(日)の両日、関西学院大学において開催されました。大会報告ならびに次回第25回大会の開催要領等についてお知らせいたします。
社会・経済システム学会第24回大会は、「幸福・不幸と社会経済システム」と題する大会テーマのもと、11月12日(土)、13日(日)の両日、兵庫県西宮市の関西学院大学で開催され、各分科会の報告、討論をはじめ、各プログラムとも好評裡に終了しました。
1日目午後の基調講演では、法政大学の田中優子氏を招き「江戸時代にみる仕合せの基準」と題して、講演をして頂きました。また、1日目の企画分科会では、「非営利価値と幸福・不幸の社会経済システム」というテーマのもとに、2日目の企画分科会では、「幸福の社会経済システム」というテーマのもとに、それぞれの報告者からこの分野における研究の最新動向について報告が行われました。なお、大会二日目の企画分科会「幸福の社会経済システム」は、関西学院大学21世紀COEプログラムとの共催でした。
今年度の大会は、第1日目に57名、第2日目に42名が参加し、盛況のうちに終了することができました。学会大会の開催に尽力された関西学院大学の高坂健次大会実行委員長をはじめとする大会実行委員の皆様のご協力に深く感謝いたします。
社会・経済システム学会の第25回大会は、神戸大学において下記の要領で開催することになりました。
社会経済システムをめぐる近年の論議、とりわけ改革論議が、新自由主義に立脚する市場[原理]主義的言説に圧倒的に支配され続けていることは否定できないと思われる。「小さな政府」、「規制緩和」、「民営化」といった一連のキャッチフレーズで特徴づけられる市場主義改革が、言わば時代の風潮となって、自明の前提とされ、その課題設定自体への異論は無視されるか、無視されない場合でも抵抗勢力のレッテルを貼られ指弾の対象となりかねない状況が見られると言っても過言ではないからである。
市場主義のこのような席巻については、どのように見ればよいのだろうか。その評価をめぐっては賛否両論、様々な見方がありうると思われるが、いずれにせよ、現代の社会経済システムについて考えるとき、市場主義とどう向き合うかは避けて通ることのできない基本的課題の一つであることだけは確かであろう。
振り返ってみると、市場主義の潮流は1990年代以降特に強まったと言えるが、その背景には、東西対立の冷戦体制が終焉し、旧社会主義諸国がこぞって市場経済を指向するなかで、市場経済体制が、冷戦の勝利者としてのアメリカ主導のもとに、普遍化していくグローバリゼーションの時代に突入したことや、折から進行中の情報技術(IT)革命がその動きを加速させるといった、政治・経済・技術面での劇的とも言うべき現実状況の変化があったことを見逃してはならないであろう。それ故、このような歴史的文脈に着目して、国際的視点から、市場主義の潮流をどう捉えるかにアプローチしてみることもできようし、またFTAや通貨同盟等、地域経済統合の進展もグローバリゼーションの一現象形態として、この文脈で論ずることが可能であろう。さらに、環境問題の深刻化をはじめとして、グローバルな「市場の失敗」の可能性とそれへの対応策も検討するに値しよう。
市場主義改革の進展は、国内的には、各部面に実に様々な影響を及ぼしているように思われる。所得格差の拡大に見られる不平等化現象、失業率増大とニート・フリーター問題、労働時間の増加という逆行現象(特にアメリカ)など、市場主義改革に付随して発生していると見られる問題は少なくない(ポラニー流に言えば、「経済が社会を破壊する」プロセスの進行)が、その検証や対応策の検討も課題と言えよう。また日本の場合は、いわゆる日本型経済システムの変質の可能性とその是非、少子・高齢化時代を迎えての市場主義改革のもつ意義と限界など、市場主義との関連で論ずべきテーマは、本学会の特色である文・理系にまたがる学際的なものを含め、多岐にわたると思われる。
新入会員紹介 〜次の方々の入会が11月12日(土)の総会において承認されました〜(敬称略・※は学生会員)
林 英輔(はやしえいすけ、麗澤大学大学院国際経済研究科:情報科学、政策科学)、高 杏華(こう きょうか、京都大学経済学研究科招聘外国人学者・台湾義守大学企管系(助理教授):中小企業)、郷田 慎一(ごうだ しんいち、UFJビジネスファイナンス:金融、リスク・マネジメント)、田村 剛(たむら ごう、大阪府立大学生命環境科学研究科:地域経済)、豊田 美智子※(とよだ みちこ、大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程:経営学、経営工学)、水野 宏美※(みずの ひろみ、慶応義塾大学大学院社会学研究科、家族社会学)、中村 文子※(なかむら あやこ、東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程:国際政治・関係論)
(所属変更・住所変更は省略)
2005年11月12日(土)の総会で、昨年度の会計決算について岸本・清成両会計監事の監査報告書とともに事務局から報告があり承認されました。また、今年度予算案についても事務局より資料に基づき報告があり総会で承認されました。
(会計報告、予算案資料は省略)
現在、第18号まで無料公開している学会誌『社会・経済システム』について、国立情報学研究所の新体制整備に伴う契約更改時(本年12月末日まで)に、新契約を締結することが総会で決定されました。新契約の趣旨は「刊行後1年以上経た学会誌を、電子図書館サービスで無料公開とする」というものです。なお、学会誌掲載内容の電子化は、すべて情報学研究所の負担によって行われるため、当学会に一切の費用負担は発生しません。
この新契約によって、新刊の印刷部数の削減、既刊在庫の増加の防止、さらに過剰在庫の処理が可能となり、事務局担当機関の負担が大幅に軽減されます。また、学会誌掲載論文の社会的流通が促進され、学会への認知度や評価が高まる機会が増大し、さらに学術研究の活性化に貢献しうると期待されます。
諸般の事情で学会費を滞納されている会員について、会費請求方式を次のように行うことが総会で決定されました。
継続して3年以上会費を滞納している会員(滞納4年目およびそれ以降の会員)には、学会誌は送付しないが、3年分会費の請求を行う。1年以上3年未満の会員(滞納3年目までの会員)には学会誌の送付とともに、滞納分の会費を請求する。長期滞納の会員におかれましては、会員資格継続が容易になりましたので、会費納入を何卒よろしくお願い申し上げます。
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