社会・経済システム学会 2006.4.1
新年度が始まり、会員諸氏におかれましては、意気込みも新たに研究、教育に励まれておられることと存じます。今年度大会のご案内を中心に、ニューズレター・JASESS No.67をお届けいたします。
社会・経済システム学会の第25回大会は、神戸大学において下記の要領で開催することになりました。
社会経済システムをめぐる近年の論議、とりわけ改革論議が、新自由主義に立脚する市場[原理]主義的言説に圧倒的に支配され続けていることは否定できないと思われる。「小さな政府」、「規制緩和」、「民営化」といった一連のキャッチフレーズで特徴づけられる市場主義改革が、言わば時代の風潮となって、自明の前提とされ、その課題設定自体への異論は無視されるか、無視されない場合でも抵抗勢力のレッテルを貼られ指弾の対象となりかねない状況が見られると言っても過言ではないからである。
市場主義のこのような席巻については、どのように見ればよいのだろうか。その評価をめぐっては賛否両論、様々な見方がありうると思われるが、いずれにせよ、現代の社会経済システムについて考えるとき、市場主義とどう向き合うかは避けて通ることのできない基本的課題の一つであることだけは確かであろう。
振り返ってみると、市場主義の潮流は1990年代以降特に強まったと言えるが、その背景には、東西対立の冷戦体制が終焉し、旧社会主義諸国がこぞって市場経済を指向するなかで、市場経済体制が、冷戦の勝利者としてのアメリカ主導のもとに、普遍化していくグローバリゼーションの時代に突入したことや、折から進行中の情報技術(IT)革命がその動きを加速させるといった、政治・経済・技術面での劇的とも言うべき現実状況の変化があったことを見逃してはならないであろう。それ故、このような歴史的文脈に着目して、国際的視点から、市場主義の潮流をどう捉えるかにアプローチしてみることもできようし、またFTAや通貨同盟等、地域経済統合の進展もグローバリゼーションの一現象形態として、この文脈で論ずることが可能であろう。さらに、環境問題の深刻化をはじめとして、グローバルな「市場の失敗」の可能性とそれへの対応策も検討するに値しよう。
市場主義改革の進展は、国内的には、各部面に実に様々な影響を及ぼしているように思われる。所得格差の拡大に見られる不平等化現象、失業率増大とニート・フリーター問題、労働時間の増加という逆行現象(特にアメリカ)など、市場主義改革に付随して発生していると見られる問題は少なくない(ポラニー流に言えば、「経済が社会を破壊する」プロセスの進行)が、その検証や対応策の検討も課題と言えよう。また日本の場合は、いわゆる日本型経済システムの変質の可能性とその是非、少子・高齢化時代を迎えての市場主義改革のもつ意義と限界など、市場主義との関連で論ずべきテーマは、本学会の特色である文・理系にまたがる学際的なものを含め、多岐にわたると思われる。
2005年度の関東支部研究会が以下の要領で開催されました。
住所、電話番号、所属など登録事項に変更がございましたら、以下の社会・経済システム学会事務局まで至急ご連絡ください。
今年度も会費ご納入のほど、よろしくお願い申し上げます。なお、会費ご納入の際には同封の振込用紙をご利用下さい。
Copyright, 1999-2006, The Japan Association for Social and Economic Systems Studies