社会・経済システム学会 第30回大会


イノベーションと社会・経済システム

社会・経済システム学会 第30回大会・大会テーマ

「イノベーションと社会・経済システム」

大会テーマ趣旨説明文

 日本の社会・経済を巡る状況は厳しい。『日本の将来推計人口』によれば、2005年に1億2千8百万人あった人口は減少しつづけ、2055年には9千万人を割り込むと見込まれている。約3割も縮む日本市場は、このままでは外国企業のみならず日本企業にとっても投資先としての魅力に乏しい。また、2055年の高齢化率は40%を超え、これまで経験したことのない超高齢社会が到来することが見込まれるなど、新たな課題に直面している。さらに、いわゆる「国の借金」(国債及び借入金並びに政府保証債務現在高)は2010年6月末現在で900兆円を超え、政府による政策の実施は財源面からみて一層厳しくなることが見込まれている。

 日本を取り巻く状況は厳しい一方で、グローバルな視点でみれば、いわゆるBRICsやネクスト11といったエマージング・マーケットでは、高い経済成長が進行しつつある。日本企業・組織にとってもビジネスや活動のチャンスが広がっている一方で、地球環境問題など一国では解決できない問題がより顕在化しつつある。

 こうした中、日本の次期科学技術基本政策(2011年度-15年度)を検討している総合科学技術会議では、日本が直面する危機やグローバルでみたダイナミックな変化に対応するために、国家戦略の柱としてイノベーションを位置づけることが議論されている。具体的には、グリーン・イノベーションで世界に先駆けた環境先進国の実現を目指すとともに、ライフ・イノベーションで健康大国を目指し、科学・技術・イノベーション政策を一体的に推進し、価値創造型の新しい産業を生み出す原動力とすることが重要との方針が示されつつある(最終的な決定は2010年中の見込み)。

 イノベーションのあり方は、オープン、グローバル、そして、フラットなものに変化している。社会の課題解決に向けて、イノベーションを実現するには、科学・技術だけではなく、新たな社会システムや制度の構築も欠かすことができない。特に、エマージング・マーケットの台頭を踏まえると、日米欧などの従来の先進国を中心とした仕組みとは、全く異なる発想に基づく、社会・経済のシステムが求められる可能性もある。

 イノベーションに関する研究は、近年、多様に展開してきている。マクロの政策レベルから個々の組織レベルでのマネジメント、そして、ソーシャル・イノベーションへとフロンティアが広がっている。また、イノベーションは、技術革新をはるかに超えたシステム革新としても捉えられる。

 第30回大会では、以上のような認識を踏まえて、イノベーションと社会・経済システムについて幅広い観点から論じることで、本学会に関連する学問や研究が、新たなイノベーションやそのあり方に対していかに貢献できるかについて考えたい。多くの会員のご参加とご報告を期待したい。