社会・経済システム学会 第31回大会


復興と再生―安心・安全を拓く社会経済システム―

社会・経済システム学会 第31回大会・大会テーマ

「復興と再生―安心・安全を拓く社会経済システム―」

大会テーマ趣旨説明文

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに続く福島第一原子力発電所の事故は、被災地に未曾有の被害をもたらしたばかりでなく、日本社会全体にも甚大な影響を及ぼした。同時に、この大地震と原発事故は、既存の社会経済システムが内包していた歪み、矛盾、問題点を大きく露呈させるものでもあった。

 災害・事故に対するリスク評価の甘さ、原発に依存したエネルギー政策、エネルギーを過剰に消費するライフスタイルとそうしたライフスタイルを前提とする経済システム、専門家と非専門家の間のコミュニケーション回路の不在、異常事態にあっても政争に終始する政治システム、復興への障壁となる世界的な経済停滞と円高、膨らむ財政赤字などなど、この大震災によって顕在化された問題、目を背け続けることが難しくなった問題は枚挙にいとまがない。そして、既存の社会経済システムが抱えていたこれらの問題は、自然科学、社会科学、人文科学といったすべての研究分野に解決すべき大きな課題を突きつけている。

 被災者の窮状を考えれば、個別の被害に対する早急な対応や被災地の一日も早い復興が何よりも重要であることは論を俟たない。しかし、今回の大震災・原発事故のような大災害からの本当の意味での復興を果たそうとするなら、被災地の被害に特化した対症療法的、局所的な対応にとどまることなく、大災害によって明らかになった既存の社会経済システムそのものの根本的な問題に目を向け、システム全体の再デザイン・再構築を考えること、すなわち日本の社会経済システム全体の再生を図ることが是非とも必要となる。

 本学会が過去数年間に大会テーマとして取り上げてきた問題は、「リスクと安全」、「幸福と不幸」、「市場主義」、「持続可能な社会経済システムと地域総合デザイン」など、いずれも今回の大震災・原発事故で顕在化した問題に大きく関わるものであった。ここでもう一度、これまでの議論や考察を踏まえたうえで、人々の安心・安全を拓く新たな社会経済システムのデザインを分野横断的な立場から理論的・実践的に検討することは、文理を問わない学際的な性格を持つ本学会の果たすべき重要な役割である。

 本大会では、「復興と再生〜安心・安全を拓く社会経済システム〜」という大会テーマの下、「地域の復興」、「エネルギー政策」、「防災」、「災害とコミュニケーション」など、さまざまな領域について、多様な観点からの理論的、実践的な研究の発表と盛んな議論が行われることを期待する。