社会・経済システム学会 全国大会


異領域で対話可能なシステム概念の再構築を目指して

〜社会経済システム理論におけるシステム概念の捉え直し〜

目次

社会・経済システム学会 第26回大会・大会テーマ

「異領域で対話可能なシステム概念の再構築を目指して 〜社会経済システム理論におけるシステム概念の捉え直し〜」

大会テーマ趣旨説明文

 社会経済領域のシステム科学者は、社会経済の諸対象に対して、それをシステムとして認識し、何らかのモデルを作成する。自然言語、数理言語、あるいはシミュレーション言語を用い主体を含むシステムをモデルとして切り出し記述し、そこで生じている現象を分析・理解・解釈し、解決すべき問題を明らかにし、その解決法を模索する。これがシステム科学者の仕事である。

 このようなシステムとして主体を含む対象を捉える分析の方法論は、ウェーバの理念型から、ゲーム理論のような数理モデル、計量モデル、エージェントベースシミュレーションから解釈学的な言説まですべてで共通する認識構造であるといってよい。主体の側が構成した言説空間によって社会の中の指向対象を切り取り、分析するという基本構造は共通であるとしても、その切り取り方と、語る側の言語、問題理解と解決の方法を巡って多くの方法論的な対立と混乱がある。

 もともとフィードバック等のシステム概念は、因果的、機械的モデル観に対抗して、アリストテレス以来の目的因を記述するために登場してきたという側面を持つ。その後発展した、フィードバック制御、複雑性、階層性、構造変動、自己組織化、創発、学習等の諸システム概念は、領域を超えた「人間や社会を認識するための語彙」を提供し、20世紀後半の人間と社会を語る言説空間は豊穣なものとなった。日常言語の中でさえフィードバックのような概念は普通に用いられる。だが今日、その豊穣性は失われつつある。

 社会システム論と理論的システム論の間で、超え難い概念上の溝が、システム境界や、自律性などの概念を巡って生じつつある。またミクロとマクロを巡る対立、意味的システムと機能的システムを巡る対立も混乱に拍車をかける。これらを放置することは、システム科学がシステムという一般性を持った対象記述の言説空間の「単語」「概念モジュール」を構築し提供するという理念を放棄することに他ならない。我々は現在の知の地平の中で、人間社会に関する厚みのある記述を提供する事のできる、システム的な概念セットについて改めて再構築する必要に迫られている。それは理論レベルだけでなく、あらゆる人間社会に対するシステムの実践領域から抽出される必要がある。参加的アプローチ、解釈的方法、内部モデル、構造変動、自己組織化、システム境界、目的、学習、等々様々な語彙がシステム認識の座標軸の中に位置付けられ、豊穣な共有知の地平を再構成するための理論や方法論、実践、応用からの提言と討議を歓迎する。



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