社会・経済システム学会 第28回大会・大会テーマ
「持続可能な社会経済システムと地域総合デザイン」
大会テーマ趣旨説明文
現代の社会経済の変化はすさまじく、内外の社会経済システムの構造が激変し、多種多様な問題が連鎖的に噴出している。国際的には、深刻さを増す地球環境問題や逼迫する資源・エネルギー問題、あるいは米国発の金融危機や中国経済の先行き不安など、問題が山積している。さらに、国内的には、少子高齢化や財政再建の問題に加え、疲弊した地域経済の再生や人材育成の問題、食の安全、悪化する労働・生活環境の改善や格差社会の是正など、多くの問題が差し迫ったものとなっている。
現代社会がこうしたグローバルに関連する問題群を抱えるようになったのは、1960、70年代に経済が成熟し「豊かな社会」を迎えた先進諸国がその後の「脱工業化社会」への模索のなかで、打開策を国外に求め、70年代のドルショックや80年代の金融ビッグバンに代表される規制緩和・撤廃によって自由市場経済のグローバル化を推し進めたことに起因する。とりわけ、1990年前後の社会主義体制崩壊以降は、情報技術革命の動きに押されて、グローバルな問題群が一気に顕在化した。
これに対して、フランス、ドイツを中心とする大陸ヨーロッパ諸国は、ヨーロッパという地域に根を張る社会経済システムのモデルを新たな代替モデルとして提示した。1990年代後半から21世紀のはじめにかけては、アメリカ、イギリスのアングロ・サクソン諸国の社会経済モデルが高い経済パフォーマンスを示し、またそれを範として制度転換を進めたわが国も、戦後最長の好景気を記録し、その限りで良好なパフォーマンスを示した。けれども、現在、米国発の金融危機が各国に波及し、世界的な金融システム不安が加速化し、景気悪化への危機感が強まっていることに対して、各国が公的資金を導入し、協調的な政策対応を取っていることに端的に現れているように、現代の社会経済システムはグローバルな危機や問題を抱えているだけでなく、そのことが同時にまた、財政赤字、地域経済の疲弊、労働生活環境の悪化などの国内的な諸問題とも連動している。
一見多種多様に見える上記の問題群も、その元を辿れば、それまで社会のなかに埋め込まれていた社会経済的規範を支える制度的枠組みが取り払われたことに起因する。したがって、今日起こっている諸問題群の根本的解決のためには、それらを新たなローカルな制度的枠組みのもとに組み入れ直し、トータルな問題解決を試みることが必要不可欠である。このように捉えるとき、今日顕在化している問題群の根底には国際的にも国内的にも社会経済システムの「持続可能性」(sustainability)と、それを具体的に展開するための「地域総合デザイン」(community design)が社会的に要請されているということができる。
本大会では、「持続可能な社会経済システムと地域総合デザイン」という大会テーマの下、多くの会員のご参加とご報告を期待したい。